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【33枚目】Yoko Ono / Plastic Ono Band

ヨーコ・オノといえばロック史上もっとも嫌われた人物のひとりであろう。とはいえジョン・レノンと出会う前から現代美術界ではもともとけっこうなビッグネーム。なにせ元フルクサスですからね。
さて、そんな彼女の記念すべきファーストアルバムがこれである。邦題は『ヨーコの心』で、同時期に発売されたジョンの『ジョンの魂/Plastic Ono Band』とセットになっている。『ジョンの魂』もすごいアルバムなのだが、こちらもまた強力だ。
PLASTIC ONO BAND
YOKO ONO
B01LOJD5SE

メンバーは基本的にはクラウス・ヴアマンとリンゴのリズム隊に、ジョンがギターという『ジョンの魂』をよりシンプルにした編成。B面一曲目の「AOS」のみオーネット・コールマンのグループと録音している。
まあとにかくこのバンドの演奏がすごいのだ。タイトなリズム隊にソリッドなギター、完全に早すぎたノーウェーヴ。ヨーコのヴォイスもフリージャズのサックスみたいに聞こえなくもないので、ちょっとコントーションズみたいに聞こえたりする。
フルクサス周辺の実験音楽の多くは、よくも悪くもコンセプチュアル・アートでしかないというか、譜面に書かれた指示が全てであって、出オチというか実演することをあまり考慮されてないことが多い。それに対してこちらは出している音自体が超かっこいいところがいいですね。
古い世代のロックファンから嫌われがちなアルバム、半ばなかったことにされているアルバムというのがいくつかある。いますよね、ルー・リードの『メタル・マシーン・ミュージック』を悪い冗談としか思えない人とか、『ジャジューカ』をもって「ブライアン・ジョーンズには実は才能なんかなかった」とか言っちゃう人とか。いずれも今となってはある種の好事家からは愛好されているわけだが、ヨーコ嫌いというのもそれに近いものがある気がする(ビートルズ解散にまつわる恨みというのももちろんあるとして)。
ありえないことだけど、仮にヨーコがジョンと出会っておらず、ニューヨークの若いミュージシャン(リチャード・クワインとか)を起用してこんなアルバムを作ってたりしたら、キャプテン・ビーフハート級のカルトスターになっていたかも、とか夢想したりしました。完全にニューヨークの音だし、彼女自身のニューヨークでのもともとのポジションなど考えればありえない話ではないはずだ。なんならジョン・ケールあたりをプロデューサーに迎えたりするかもしれない。うわー、超かっこよさそう!