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【19冊目】オルガ・トカルチュク『プラヴィエクとそのほかの時代』

昨年ノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家。ちなみに著者略歴に「2018年のノーベル文学賞」とあったので「2019では?」と思ったのだけど、考えてみたら2018年はセクハラ絡みのスキャンダルで見送りになり、2019年に「2018年」「2019年」の2年分まとめて授賞が行われたのであった。ともあれ受賞をきっかけにして、その時点で邦訳のあった『昼の家、夜の家』と『逃亡派』を読み、さらに年末に新しく訳が出た本書も手にとってみたという次第。

これまで読んだ2作はいずれも、ポーランドの現代史を背景においた寓話的な断片の積み重ねみたいなスタイルだったのだが、今作はそういう面もありつつ、もうちょっと長編らしい筋がある感じ。ロシア(ソ連)とドイツに挟まれた20世紀ポーランド史に翻弄される家族の物語、みたいなのが中心に置かれている。
さて、トカルチュクを3冊今回は比較的読みやすかったんだけど、どうもぼくは断片積み重ね系の小説が苦手みたいだ。集中力がないんだと思うけど、なかなか自分の中で断片の集積が全体像を結んでいかないというか、漠然とした印象しか残らない。あと、トカルチュクは現代史のほかにどうも宗教的というか神学的な背景がある感じで、本作も終盤そういう場面が展開されるんだが、そこがどうもピンと来なかったというのもある。

歴史や社会(および宗教)といった大きなテーマを、大上段に振りかぶらない形で描く、みたいなのが好まれるというか評価されるのはわかるので、この作家がノーベル文学賞を取るというのもすごく納得できるんだけど、んー、3冊読んでみて、ちょっと自分には合わないかな、という感じだった。もちろんこれは作家の疵ではなく、あくまでぼくのほうの読解力とか嗜好とかの問題。好きなひとはすごく好きだろうと思います。