タバコ・ロード
名匠ジョン・フォードの作ながら、『ブリッジ・オブ・スパイ』とは正反対のぶっ飛んだ映画。なにしろほとんどバカと狂人しか出てこない。
junne.hatenablog.com
西部劇ではなく、田舎の貧乏白人、いわゆるヒルビリー的な人々を描いている。主人公の老夫婦(子沢山すぎて何人産んだか覚えてないという)、息子と娘が一人ずつ(あとはだいたい結婚して家を出ていった模様)、老母という家族構成。
娘婿が「あんたの娘を嫁にもらったはいいが、全然言うことを聞かない」とクレームを入れに来るのだが、「あれはまだ13だからな(!)。だったらこっちの娘と交換するか」「もう23だろ、そんな年増はいやだ」(!!)みたいなヒドい会話が展開(ここ、年齢はうろ覚えです)。しまいに娘婿に「おまえの持ってる蕪をくれ」と言って断られると、家族全員で襲いかかって強奪、そのまま全員ナマでかじりつくという目を疑うようなオープニング。
息子は車のクラクションに興奮して「ブッブー!ピッピー!」と叫び続け、なぜか教会のおばさん(好きあらば聖歌を歌う)に見初められて結婚し、車を買ってもらう。
そんな感じで楽しく暮らしていると、家族の農場が地主から接収されるという危機が訪れる。これを避けるには地代を収めないといけないということで金策に乗り出すのだが、これまたドタバタするばかりでまったく上手くいく気配なし。最後はいい話に落ち着いたのかなと見せかけるも結局は全然懲りてない。もともとは舞台でのヒット作で「プア・ホワイトを描いた作品」ということになってるようなのだが、とにかく終始狂騒的。スラップスティックといえなくもないが、ジョン・フォードは一体何を思ってこんなものを……。
『ゴシックカルチャー入門』における「鄙びるゴシック」の章で紹介されているヒルビリーに興味を持ったかたは、本作で最高にバカバカしい形で描かれているので、観てみるといいのではないでしょうか。