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家族を想うとき

『ダニエル・ブレイク』をU-NEXTで鑑賞した直後に映画館で鑑賞。これもまたつらい……むしろもっとつらい……

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主人公の中年男性が仕事にありつくところから始まる。宅配の配送で、個人事業主として配送業者と契約するという形態。最初に配送用の車を買うことを薦められ、妻の車を売ってトラック代に充てることに。この時点で「ああー、それ絶対やめたほうがいい……」と思うのだが案の定。
個人事業主とは名ばかりで仕事は完全に会社の管理下におかれ(携帯端末で常時監視されている)、休むこともままならない。一方、訪問介護の仕事をしてる妻は車を売ってしまったためにバス移動しなければならなくなり、常に時間に追われる状態に。こうして両親が毎日遅くまで仕事で不在状態となっていくにつれ、子どもたち(息子と娘)の精神状態も不安になっていく……
どんどん追い詰めらていく一家。数少ない心温まる場面(助手席に娘を乗せて配送に行くところと、家族でトラックにヒップホップをみんなで歌いながら乗りテイクアウトの夕食を買いに行くところ)がいずれも仕事の車を使うなみたいな感じで責められるのもつらい(「個人事業主」なんていうのが完全に形だけだということがわかる)。
基本的に誰も悪くない(配送所のボスだって、ドライバーたちの扱いはひどく見えるけど、一方でそうやって頑張って必死に会社を成功させてきたわけで、一方的に責める気にはなれない)なか、これ、どうするのが正解だったのか……。さえぼう先生のブログが目からウロコではあった。

この映画のポイントとして、貧困について労働者に責任がないということが明確にされている一方で、リッキーの人生における個人的な選択として、「男らしさ」にこだわることが人生がメチャクチャになってしまう過程のはじまりとして描かれていることがある。リッキーの人生が狂い始めた大きなきっかけとして、妻のアビーが介護の仕事に使っていた車を売って、自分の仕事用のヴァンを買ったということがある。リスクのあるドライバーの仕事に投資するよりも、すぐ失職するようなことはまずなさそうなアビーが介護士として効率的に働けるようにサポートして、リッキーはしばらく短時間のアルバイトなどをしながら子供の面倒をみるという選択肢もじゅうぶんあり得ると思うのだが、リッキーの頭にはそういう考えが一切、ないようなのである。

saebou.hatenablog.com


前作同様、日本でも全然ありうる話だ。