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【34冊目】乾緑郎『機巧のイヴ』三部作

和風スチームパンクの三部作。

第一作『機巧のイブ』は、江戸時代の日本を思わせる架空世界を舞台に、「機巧人形(まあロボットとかアンドロドとかそういうものだ)」のイヴとその周辺人物たちにまつわる連作短編集。
まずは冒頭一作目のそのまた冒頭部分でガシっと掴まれ、そしてオチに唸らされる。「機械に魂は宿るのか」みたいな古典的なSFテーマにはそんなに深く踏み込むことはなく、むしろ著者がミステリ畑出身なので、ミステリ的な仕掛けの施された作品が多い。

第二作『機巧のイヴ 新世界覚醒編』は前作から一気に時代が下り、現実世界でいう大正時代くらいになるのかな。これまた架空の新世界(アメリカらしき)にて、万博の準備が進んでいる。既に動かなくなっているイヴは日下(=この世界における日本的な国)のパビリオンの出し物として設置されていた。で、そこから陰謀が始まっていくのだが、前作に比べるとややコミカルな要素が強まったり、アニメとかラノベっぽいノリ(雑なまとめで恐縮ですが)が強くなってて、ちょっと不満。

そして第三作『機巧のイヴ―帝都浪漫篇―』はそこからさらに十数年後、舞台はふたたび日下に戻ってくる。時代的には大正~昭和。これまで以上に現実の日本近現代史とパラレルな事件が起こっていく。最初の方は軽いノリながら、関東大震災朝鮮人虐殺、甘粕大尉事件、そして後半は満州へと舞台が移る。前作からの登場人物やそのゆかりの人々も登場するのだが、前作のノリが軽かっただけに、その悲劇的な末路などがズシっと来る。「ひぐらしのなく頃に」の前半のギャグパートが後半で効いてくるみたいなものである(わかりにくいか)。

ということで、第二作への不満も三作目を読んで解消され、むしろ緩急のある優れた三部作だなと思うに至りました。