ビッグ・ケーヒル
ジョン・ウェイン主演、73年の西部劇。
仕事人間で家庭を顧みない保安官のケーヒル(ウェイン)とそれに反発する息子たちの葛藤を描く、みたいな内容。
長男(青年)が次男(少年)を巻き込み、アリバイ作りに協力するという形で銀行強盗の片棒をかつぐのだが、その過程で殺人が起きてしまう。次男は後悔し、隠した金を返そうとするのだが、そのため一味に脅迫される。さらには冤罪で逮捕されて絞首刑にされそうになる人たちが出てきたり、ちょっと反抗期とかでは片づけられないような展開に。特に長男は、父親が助手として連れてきたネイティヴアメリカンに差別的なことを言う場面もあったりして、親がかまってくれないからグレちゃいましたという息を超えている。次男はかわいいんだけど。
最終的には息子が改心してめでたしめでたし的になるのだけれど、正直「いいのか、それで?」と、ちょっとモヤモヤするものが残る。
とはいえジョン・ウェイン演じる主人公は、まあ厳格な父親であり、清廉潔白な腕利きの保安官という感じで、この主人公像は実に古典的。このころアメリカでは一方ではニューシネマが全盛だったわけで、まだこんな映画やってたんだ、という驚きがある。まあパンク全盛期の全英チャートのことなんかを思えば、世の中そんなものか。
それと、ここしばらく色々と西部劇を観ていて思ったのは、老人を描いたものが多いということ。老境を迎えたガンマンとか引退した元保安官とか。イーストウッドの『許されざる者』は西部劇を終わらせた映画と言われているが、ひょっとしたらそもそも「ジャンルの終焉」を延々とやっているのかもしれない。