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迷子になった拳

知人にお誘いいただいて試写で見せていただいたミャンマーの格闘技「ラウェイ」に関するドキュメンタリー映画
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ラウェイというのは基本的にキックボクシングやムエタイ的な打撃系なのだが頭突きや投げもOK、急所攻撃もわざとでなければOK、グローブはせずバンデージだけで殴り合うというきわめて危険な格闘技である。世界でもっとも危険な格闘技とも呼ばれるらしい。本作はそんなラウェイに挑戦する日本人選手のその周辺の人たちを描いている。

ミャンマーでは神事的な要素もあったりするような伝統的な国技なのだが、そんな格闘技に挑む外国人というのもタダモノなはずはない。挫折を抱え自分探し的にミャンマーに降り立つ者、「30までに格闘技で食えるようにならなければ引退する」と最後の挑戦的として臨む者、ラウェイのベルトを獲ることでさらなる大舞台への挑戦を目指す者等々。さらにそこに絡む団体のあれこれがまた一筋縄ではいかないというか、みんなすごく美しいことを言うんだけどやってることは結構生臭かったりもする。魑魅魍魎の世界だなあと思う。

冒頭から気になったのが、語り手として「僕」(=監督)が出てくること。「自分」が出てくるドキュメンタリーっていうのは下手すると単なる自分語りに陥っちゃうんだが、この場合は会社をクビになって将来を案じている中でこの仕事をもらった監督自身の状況と、さまざまな事情でラウェイに挑む選手たちの姿がクロスしてちょっと独特なエモみが出ている。

ミャンマーの格闘技についてのドキュメンタリー」というので、ちょっと地味なものを想像してたのだが、むしろ様々な業や人間模様が交錯してドラマチックですらある。みんなこの後も普通に幸せな人生は送らないんだろうなと思わされるが不思議と後味はさわやかだ。

あと、いま日本国内でラウェイの興行を行っている団体ILFJでは、現地の形式をそのまま再現すべく伝統楽器サインワインの生演奏も入っているようだ。これ日本ではなかなか生で聴く機会がないと思うので、このためだけでも試合観に行きたいと思った。

3月下旬より順次全国公開
lostfist.com