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バッド・ブレインズ バンド・イン・DC

アメリカン・ハードコア初期の最重要バンドのひとつであり、ハードコア史上でも数少ない全員黒人によるバンド、バッド・ブレインズのドキュメンタリー。
2007年の再結成に際してのツアーに密着しつつ、並行してバンドのヒストリーを振り返るというのが基本的な構成である。
もともとはフュージョンをやっていたバンドがパンクに衝撃を受け、そのテクニックを活かしてハードコアの元祖ともいうべき超高速パンクロックを演奏するようになる。途中、ボブ・マーリィのライブに衝撃を受けてラスタとなり、レゲエも取り入れる。当時アメリカではラスタは危険思想と思われていたので警察からの不当捜査を受けたりといった障害もありつつ、バンドはNYに進出しCBGBの看板バンドに。しかしながら、ツアー先でのBig Boysとのゲイフォビア絡みのトラブルによって悪評が高まり(ラスタということもあって)、バンドは勢いを失った。
当時を振り返るメンバーが「オカマ野郎くらい誰でも言うだろ、でも俺たちがそれを言うとみんな目くじらをたてるんだ」みたいなことを言っており、横で聞いているイアン・マッケイがすごく微妙な顔をしているのが印象的である。

ヴォーカルのHRが完全に客を馬鹿にしたようなライブをやり、楽屋でメンバーが激怒するという不穏なシーンから始まることからもわかるように、ブレインズの歴史はHRという奇人とのつきあいの歴史でもある。誰もが認める天才でありながらある時期以降どんどん奇行が目立ち始め、ついには脱退。バンドは代わりのシンガーを入れて活動を継続するも、やはりHRに代わるフロントマンと出会うことはできず、やがてはHR復帰、みたいな展開になるのだが、復帰しても苦労は尽きない。セロニアス・モンクにたとえている人がいて、非常に納得がいった。再結成ツアーに際してもHRは終始ニコニコしてるのだがそこが逆に不気味である。映画の最後では、オーガニックスーパーで優秀な店員として働くドクター・ノウや、ゴルフを楽しむダリル・ジェニファーの姿も映し出されていて、実に対照的だった。