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THE FOOLS 〜愚か者たちの歌

実のところFOOLSのライブを観たことはない(ブルースビンボーズはある)し、音源も最近買ったばかりである。ということでバンドへの思い入れは無い状態で映画に臨んだ。

映画はヴォーカルの伊藤耕が出所するところから始まる。なんどもドラッグ問題でシャバとムショを行き来する人生を送ったこの伊藤耕という人物の破天荒な魅力。そして伊藤とは複雑な愛蔵関係にあるギタリストの川田良(これがまた大変に面倒くさそうな人物である)。この二人を中心に、何度もメンバーチェンジを繰り返しつつ、決して恵まれた環境とはいえない中で活動を続けたバンドのドキュメンタリーである。

メンバーおよび周辺の人々による証言、そしてライヴを中心とした映像の数々で構成されているのだが、やはりライヴのかっこよさがまずは印象に残る。とくにギターがめちゃくちゃかっこいい。残念ながらスタジオ音源ではこの凄さはとらえきれてない気がするな。
そして、取材に答える歴代メンバーたちの故人率の高さ。なかにはインタビュー直後に亡くなったという人もいる。川田良も、若い頃の恰幅の良い映像と晩年の姿のギャップには驚く。
彼らの最後のアルバムの録音風景もとらえられており、レコーディングに使用された四谷アウトブレイクの風景にも感慨深い(観てるか!)。

何度目かの逮捕により刑務所に入った伊藤耕は、出所を目前に控えて突然の死を遂げる。
看守たちが適切な措置をとっていれば免れた死なのではないかと遺族が訴えを起こしていたのだが、これについては映画の公開後、国が賠償金を支払うことで判決がおりたことは記憶に新しい。
この判決のあと、刑務所はホテルじゃないんだからとか言っているツイートを見かけたが、苦しみのたうち回る急病人にまともな検査も受けさせるというのがホテルなみの扱いだとでも言うのだろうか。入管でいまも日々行われている数々の人権侵害とも通じる問題がここにあるのだ。

ちなみに映画の公開に合わせて刊行された書籍『THE FOOLS MR.ロックンロール・フリーダム』はものすごい力作である。日本のパンクシーン黎明期について知りたければ必読だ。