【14冊目】長谷川陽平『大韓ロック探訪記』
- だいぶ前に某用件で書いたのだけど結局使われなかった書評の原稿を発掘したのでちょっと書き直してこちらに転載します。
大韓ロック探訪記 (海を渡って、ギターを仕事にした男)
長谷川 陽平 大石 始
DU BOOKS 2014-05-16
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- 本書の表紙が撮影されたのは大韓ロック(70年代の韓国ロックを指す)の膨大なレコードコレクションで知られる韓国のロック酒場、「コプチャンチョンゴル」だ。ぼくは一昨年、刊行されたばかりの本書を持ってここを訪れた。掲載されているレコードジャケット見せてリクエストをするつもりだったのだけれど、むしろ印象的だったのはその場にいたみんなが「おお、長谷川だ長谷川だ!」と盛り上がる姿だった。
- K-POPブームも一段落したと言われる一方で、最近は韓国の若手インディバンドの来日が増えている。ヘイトスピーチデモが吹き荒れていた時期に新大久保のライブハウスに出演し、最後には観客を引き連れて店を飛び出してストリートを祝祭空間に変えたヤマガタ・ツイークスターをはじめ、毎月のように日韓を行き来する青年、パク・ダハムなどを通じた日韓シーンの交流も盛んになってきた。
- なかでも韓国のインディロックをリードするトップバンドが「チャン・ギハと顔たち」であり、そのギタリストでプロデューサーでもあるのが、本書の著者、長谷川陽平だ。大韓ロックに魅せられて韓国を訪れてレコードを漁り、やがて盛り上がりつつある韓国インディーズシーンで頭角を現して、ついには大韓ロックの伝説的、サヌリムに参加する仁摩で至る(本書ではその大抜擢を「ローリング・ストーンズに山口冨士夫が参加するようなもの」と喩えている)。
- 本書はそんな長谷川の半生を辿るインタビューを通じて、一人の日本人青年が実体験した韓国ロックの歴史と現在を描き出している。日本でも知られる大韓ロックの偉人たちの素顔や軍事政権下で海外の情報が閉ざされていた時代を経て民主化とともに独自の形でスタートしたインディバンドたちが紹介され、現在のシーンを支える若手や往年の偉大なオリジネイターとの対談や膨大なレクションから厳選されたレコードを掲載。まさに生きた韓国ロック史と言える一冊だ。