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1000冊紹介する

【40冊目】對馬 陽一郎『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』

どうも自分にはADHD傾向があるんじゃないかなと思ってたので読んでみた。 仕事をする上での対策がいろいろと書いてあるので参考にはなるものの、そもそもそれができれば苦労しないよってことも多い。 ともあれ自覚的であることで対応できることはあるってこ…

実録女囚ものロシア編――【39冊目】『プッシー・ライオットの革命』

2018年サッカーワールドカップ決勝戦への乱入パフォーマンスも記憶に新しいロシアのアクティヴィストにしてパンク・バンド、プッシー・ライオットの創設メンバーの一人が書いた本。原書は2017年刊行で邦訳は2018年。プーチン政権への抗議として大聖堂で行っ…

【39冊目】残月記

ファンタジー作家小田雅久仁による『本にだって雄と雌があります』以来9年ぶりの新刊。前作もたいへんに評判になって本屋大賞かなんかを獲ってたと思うのだが、今作も大いに話題になっている。 「そして月がふりかえる」「月景石」「残月記」の3編を収録した…

【38冊目】フランク・ミラー『スーパーマン:イヤーワン』

スーパーマンの生い立ちという、ある種手垢のついたテーマを新たに書くとした際に、何ができるのか。SNSで見る限り、かなり賛否両論のあった一冊である。 『ダークナイト・リターンズ』のフランク・ミラーがライターなのだが、個人的には絵もミラーだったら…

「むう」な掌編集――【37冊目】柴崎友香『百年と一日』

掌編集というのがいまひとつ苦手なのは、最近あちこちで書いてるように「オチ」にあんまり興味がないからだ。ショートショートとか掌編集ってどうしても、変わった設定と気の利いたオチというのがポイントになってくるものだと思うのだけど、「変わった設定…

【36冊目】四方田犬彦『聖者のレッスン: 東京大学映画講義』

四方田犬彦が東大の宗教学科でおこなった講義録。 映画で描かれる聖者についての講義なのだが、聖者自体の説明もちゃんとしてくれるので、宗教学のさわりとしても読める。 キリスト教(ジャンヌ=ダルクをはじめとする聖者)からはじまり、台湾(媽祖)や日…

【35冊目】グラント・モリソン『オールスター:スーパーマン』

グラント・モリソン先生によるスーパーマン。まあさすがの一言。スーパーマンというのは言わずとしれた完全無欠の超人なので、何か制約を与えるとか、あるいは設定をひねる(『レッド・サン』みたいに)とかしないと物語にならないわけなんですが、本作では…

【34冊目】乾緑郎『機巧のイヴ』三部作

和風スチームパンクの三部作。第一作『機巧のイブ』は、江戸時代の日本を思わせる架空世界を舞台に、「機巧人形(まあロボットとかアンドロドとかそういうものだ)」のイヴとその周辺人物たちにまつわる連作短編集。 まずは冒頭一作目のそのまた冒頭部分でガ…

【33冊目】『スーパーマン:レッド・サン』

バットマン=陰/スーパーマン=陽。というのがまあ一般的な認識だろう。でまあ、基本的にダークなほうが好きなのでぼくはスーパーマンのコミックは全然読んだことがなかったのだが、本作は「もしもスーパーマンが降り立ったのがソ連だったら」というパラレ…

【32冊目】『バットマン:ホワイトナイト』

DCを中心にアメコミを買い漁っている友人が、ハマるきっかけとなった一冊に挙げていたものなので期待して読んだのだが、なるほどさすがに面白い。 バットマンに組み伏せられ薬を飲まされたジョーカーが正気に戻ってしまう。改心したジョーカーが始めるのは、…

【30冊目】和ンダーグラウンドレコードガイドブック

和モノのディスクガイド本シーンはここ1~2年でかなりヒートアップしているのだが、これは究極の一冊かもしれない。 70年代のフォークおよびニューロックのガイドなのだが、かなりの割合を「自主盤」(「インディーズ」ですらない)が占めている。あいまに突…

【29冊目】古川日出男『おおきな森』

ギガノベルが届いた #古川日出男 #おおきな森自粛期間中に発売された大著を、自粛期間の最終日に読み終えた。大きく3つのプロットが並走している。 記憶を失った男、丸消須ガルシャが汽車(満州鉄道らしい)の中で目をさまし、そこで出会った防留減須ホルヘ…

【28冊目】ブラック・ホール

アメコミにも「オルタナティヴ・コミック」と言われるものがあって(有名なところでは映画『ゴースト・ワールド』の原作とか)、本書の著者チャールズ・バーンズはその代表的な作家のひとりだ。ロックファン的には、イギー・ポップの『ブリック・バイ・ブリ…

【27冊目】阿久津隆『読書の日記 本作りスープとパン重力の虹』

すごいのが届いた。#fuzkue #読書の日記「本の読める店」フヅクエの店主による読書日記の2冊め。シリーズなのに1冊目と造本がぜんぜん違う。この自由度の高い発想は見習いたい。 ウェブやメルマガにて書き綴られたものを加筆修正しているのだが、たぶんそん…

【27冊目】『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る シリーズ《日常術》』

ちょっと前に出たばるぼらさんとの共著『日本のZINEについて知ってることすべて』は本当に大著で労作なんだけど、いかんせんあのボリュームなので、パラパラめくったあとなかなか精読するには至らずにいたのだのだが、今回の新刊はライトで読みやすく、買っ…

【26冊目】磯部涼『ルポ川崎』

3月の松本旅行の際、往復の電車・バスで読んだ。あのころはまだ週末の一泊旅行とか(ちょっとリスクあるかなとは思いつつ)行けたんだなと思うと遠いむかしのようでもある。さて、2017年に出て大変に話題になった本をようやく読んだわけだが、川崎ってこんな…

【25冊目】高橋ヨシキ『続悪魔が憐れむ歌』

ホラー映画やモンド映画を扱った批評集の第二弾。第三弾まで出ているが、洋泉社解散にともないすべて絶版、店頭在庫もあまり見かけないので、見つけたら即ゲットをおすすめする。 取り上げられているのはロブ・ゾンビを皮切りに、『13日の金曜日』や『エルム…

【24冊目】ジム・キャロル『ダウンタウン青春日記』

ジム・キャロル『マンハッタン少年日記』の続編ということでいいのだろうか。ぼくの中のライフワークのひとつとして『プリーズ・キル・ミー』に出てくる人たちの作品を読んだり聴いたり観たりするというのがある。ジム・キャロルもその一環として読んでみた…

【23冊目】古谷田奈月『無限の玄/風下の朱』

『神前酔狂宴』もすばらしかった古谷田奈月の前作で、中編2本を収録。 「無限の玄」は三島賞受賞作になっているのだが、これがまた最高。 ブルーグラス楽団を生業とする一家の話で、玄というのは父親の名前。ほんとに玄が無限という話だからびっくりする。バ…

【22冊目】山崎まどか『映画の感傷 山崎まどか映画エッセイ集』

『優雅な読書が最高の復讐である 山崎まどか書評エッセイ集』と対になった形のエッセイ集。 ノア・バームバックやレナ・ダナムを中心とした現代の女子映画、長谷川町蔵さんとのコンビでもよく紹介しているティーン映画など、まどかさんならではのラインナッ…

【21冊目】『エドワード・バンカー自伝』

ストリート読書家チーム「Riverside Reading Club」というのがあって、最近はアトロクなんかにも出てるので知ってる方が多いかと思うのだけど、そんな彼らが好んで読んでいるジャンルのひとつにノワールとかクライムノベルというのがある。たぶん書店なんか…

【20冊目】フォンダ・リー『翡翠城市』

ケン・リュウ絶賛の中華系カナダ人作家によるファンタジー。なんかこう、ヤクザ映画みたいな小説である。本作での翡翠というのはケコン島という架空の島で算出される鉱石で、身につけると持ち主にある種の超能力を与えてくれる。ただし、それが可能なのはケ…

【19冊目】オルガ・トカルチュク『プラヴィエクとそのほかの時代』

昨年ノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家。ちなみに著者略歴に「2018年のノーベル文学賞」とあったので「2019では?」と思ったのだけど、考えてみたら2018年はセクハラ絡みのスキャンダルで見送りになり、2019年に「2018年」「2019年」の2年分まとめて…

【18冊目】ラグナル・ヨナソン『闇という名の娘』

北欧(アイスランド)のミステリ。アイスランドというとビョークくらいしか思い当たらないが、基本的に犯罪が少なく、殺人事件などは年に1回もあるかどうかというくらいだという。65歳の定年を間近に控えたベテランの女性刑事がある日上司に呼び出され、若手…

【17冊目】片岡義男『万年筆インク紙』

ここ2年くらいか、ノートに万年筆で日記をつけている。日記専門のノートではなくて、仕事のメモをとったりもらった名刺を貼り付けたりとかもろもろ全部一冊にまとめていて、こまかいメモのたぐいは普通のボールペンとかフリクションを使っているのだが、なぜ…

【16冊目】岡崎武史・古本ツアー・イン・ジャパン『青春18きっぷ古本屋への旅』

当ブログではちょっと前に「京王線古本ツアー」というのをやったわけだが、まる一冊それをやってるような本がこちら。そりゃ楽しい。 junne.hatenablog.com 中央線、総武線をはじめとして首都近郊の日帰りできる範囲での遠出(しかもだいたい暗くなる前に帰…

【15冊目】中山康樹『ジャズの歴史 100年を100枚で辿る』

2017年は「ジャズ百年」だそうである。もちろんそもそもジャズという音楽の発祥を遡っていくとどこまで行っても辿りきれない(そしてどこからどこまでがジャズなのかにも諸説が出てくる)わけで、この場合は初めてのジャズのレコードが出てから100年というこ…

【14冊目】長谷川陽平『大韓ロック探訪記』

だいぶ前に某用件で書いたのだけど結局使われなかった書評の原稿を発掘したのでちょっと書き直してこちらに転載します。 大韓ロック探訪記 (海を渡って、ギターを仕事にした男)長谷川 陽平 大石 始 DU BOOKS 2014-05-16売り上げランキング : 248046Amazonで…

【13冊目】四方田犬彦『先生とわたし』

由良君美というとぼくが最初にその名を意識したのは卒論執筆中のこと。デヴィッド・ボウイのSF作品をニューウェーブSFおよびメタフィクションとして読む、みたいな内容の卒論だったので、巽孝之やラリイ・マキャフリイなんかを参照していたわけなのだが、そ…

【12冊目】ケヴィン・バーミンガム『ユリシーズを燃やせ』

ジョイスの作品がいかに当局から目の敵にされたのか。当時はどれだけ過激なものだったのかは今となっては想像するのが難しい。 かつては英語圏では軒並み違法とされ、フランスで出版されたものが密輸されていたという。戦後にナボコフやらバロウズやらがお世…